日本財団 図書館


 

政による支援、制度整備等をバネにして、人材を確保、育成していかなければならないのである。もちろんその活動への参加の自由は保証されるべきであり、市民セクター側も参加者に対してあらゆる側面で責任を負うことを自覚しなければならない。
こうした問題は人材の確保にかぎらず、資金的な財源確保についても同様の議論があてはめられる。当該市民セクターがどのような活動を、どこでどのように展開しているのかを組織内外の利害関係者に周知させ、理解・評価を得られてこそ、多くの財源が確保できる。そして組織の透明性を高めることによって情報をフィードバックし、継続的に財源を維持することが可能となる。
また市民セクターのサービス管理については、マーケティング概念の導入による事業展開が活動を効率的かつ効果的に進めるうえで重要である。たとえ非営利的事業を行っているからといって、非効率的に組織を運営してよいわけではない。特に他の営利組織が参入、存在している市場に位置づけされる国際交流事業はマーケット指向が強く、市民セクターはきびしい競争原理にさらされがちである。
両者は巨視的には地域社会・コミュニティ(市場)において市民(消費者)を対象とし、そのニーズ(需要)に応えるサービスを提供している点で、ほぼ同様の機能を市場内で果たしているといえよう。しかし、ミクロ的には、組織の目的や理念、管理体系・戦略策定、意思決定過程、組織構成員のインセンティブ等において全く異質の性格をもつのである。
しかし最近では、営利組織による有償の類似サービス、類似活動の台頭が顕著となり、市場内競争が激化し始め、それに影響されるように、ボランティア活動を有償化しはじめる市民セクターが発生してきている。これは第2節でもふれたように、市民セクターが非常にダイナミックに、かつ機動的に外部環境の変化に対応して組織を変えていく能力を備えていることの証明である。
こうして、まるでアメーバのように自己変貌、自己増殖していく力を備えた市民セクターは、地域社会に十分貢献でき、社会的存在価値を見いだし、豊かな社会形成に寄与する組織となりうる。しかし一方で、環境適応能力や問題解決能力のない市民セクターは、組織のライフサイクルにおいて衰退期を迎え、解散、消減への一途を辿ることになるであろう、ただし、組織的に拡大し、成熟度を高めていくということは、その果たすべき社会的責任、リスク管理、アカウンタビリティが増加することを示唆し、また組織内部的には組織分裂の可能性があることを意味するのである一これは市民セクター自身が、十分認識しなければならないのである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION